ヲノサトル

2016年4月19日2 分

[映画] バンクシー・ダズ・ニューヨーク

最終更新: 2019年9月20日

イギリスの覆面芸術家 バンクシー

本名も顔もプロフィールも非公開で、壁への落書きなど違法なストリートアート多数。だが作品へのアートマーケットの評価は高く、オークションで数千万円の値がつくほどだ。


 
そんな彼がニューヨークの街中に一ヶ月間毎日なんらかの作品を仕掛け、ウェブサイトに現場写真を投稿する。それを見たニューヨーカーたちは場所を推理して特定し、作品を見ようと駆けつける。映画はその様子を追いかけ続ける。


 
画面に決して登場しないバンクシーは、いわば 舞台に登場しないゴドー であり、部活にこない桐島 である。
 

作品を連日追いかけて熱く語るファンたち。作品の前で記念写真を撮る観光客。絵の横に自分のサインを入れる者。スプレーで絵を消してしまう者。切り取って持ち去る者。ギャラリーに預けて一攫千金を夢見る者。

不在のバンクシーをとりまく様々な人々こそが、この映画の主役だ。
 

実のところバンクシーは何も「表現」していない。彼自身の内的な何かの「表現」ではなく、グラフィティやストリートアートやハプニングといった「装置」を仕掛けることで、まわりの人々がアート、価値、倫理、経済、公共性、報道、ネット社会、群衆……様々な問題について考えざるをえないように仕向けること。それこそが彼のねらいのようだ。


 
同じ壁の落書きでも、バンクシー作品は「アート」として賞賛され高値がつき、無名のライターのグラフィティは犯罪とされる。いったい「アート」とは何なのか?誰が「アート」を定義できるのか?

本作でそんな疑問を感じたなら、バンクシー自身の監督作品『 イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ 』も、ぜひおすすめしたい。

こちらは、芸術教育を受けたわけでも訓練をつんだわけでもない一介のアマチュアが、ちょっとしたきっかけで「アーティスト」に成り上がっていく様子を、皮肉たっぷりに描いたドキュメンタリー映画。

バンクシー・ダズ・ニューヨーク(amazon リンク)

#映像 #論評

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