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  • ヲノサトル

[映画] 劇場で観た映画 2017


毎年恒例「劇場で観た映画」2017年版まとめました。

コメントは、観た直後ツイッターにつぶやいたものです。

冒頭、いつものメインテーマが無くて「外伝だから仕方ないか…音楽担当もジョン・ウィリアムスじゃないしな…」と思ってたらエンドタイトルでやっぱり流れて感無量。

大満足。主人公の天才的な頭脳も異常にハイスペックな戦闘能力も、ちゃんと理由と背景が描かれているところがいい。ラストの伏線回収もニヤリとさせてくれて、続編が楽しみ。

あと「うちの子は大丈夫かな」「育て方まちがってないかな」なんて思いつめたり悩んだりしてるお母さんお父さんの息抜きにもおすすめ。「人とちがう」ことを欠損ではなくギフトとして肯定してくれるこの作品に、ちょっと気が楽になると思います。ぼくはなった。

内容やテーマに関しては既に皆さん語られてるので、ここではサウンドデザインの素晴らしさを指摘しておきたい。アプローチが『レヴェナント』に似てる。虫や鳥の声、波、雨、風といった自然音のクレッシェンドデクレッシェンドによる表現。いわゆる「音楽」は最小限。

(特にコメントなし……)

これはもう最初から最後まで「あ、これはあのミュージカル映画!」と全シーンにオーディオコメンタリーでツッコミ続けたい作品だったが、既に世界中で誰もが語ってるし、オマージュ元との比較映像も出揃ってるので、今さら何も言えないのが最大のストレス。

70年代B級映画へのオマージュ満載。ヘタレなライアン・ゴズリングと、タフなラッセル・クロウの対比はバディムービーの王道だが、出来のいい娘をからませたのが新味か。タイトルかっこいい!と思ったらカイル・クーパーでした。

(原題はパッセンジャー「ズ」で、そこが大事なんだけどねと思いつつ)宇宙旅行でもエコノミークラスはつらいなあと身にしみる映画でした。あとアンディ・ガルシアの無駄な使い方が贅沢だった。

むかし宇宙をテーマにした「ビキニ・ムーン」というアルバムを作った時、アートディレクターの常盤響さんが「旅の楽しみって景色と地元の料理じゃないすか。宇宙旅行ってどっちもパッとしなそうっすよね…」って言ってて、確かに最初は興奮するけどあとはずっと退屈だろうなと思った。

『パッセンジャー』はまさにそういった「宇宙の退屈」がテーマの映画だったよね。修学旅行の夜にみんな寝ちゃった後、ひとりだけ寝つけず「なあ…誰か起きてへん?」と突っついて隣の子を起こす迷惑なヤツが主人公。

(特にコメントなし……)

なんともつらく、けれども、いや、だからこそ美しい映画。母と会った後に流れるカエターノの「ククルク・パロマ」が絶妙で、無口な主人公の想いが伝わって胸が痛かった。(映画を見た方はぜひこの曲の歌詞を調べてみてください)

そんな繊細な映画なのに、着信音を盛大に鳴らしたオバサン一名。前方でスマホの灯りつけてメールか何か読むオヤジ一名。二人とも映画の地獄に堕ちろ!

(特にコメントなし……)

監督がウディ・アレンだからというよりも、撮影監督がヴィットリオ・ストラーロときいて俄然、観たくなった一本。"dreams are dreams"って言葉がほろ苦かった。しかしまあ、こういうどうでもいい話(ほめ言葉)を100分以内に収めて毎年コンスタントに作り続ける監督って貴重ではないかな。

ネタバレしたら首絞めて殺されること確実な「どんでん返し」系の映画なので、物語には触れられないが。95年の映像… DV録画映像… 2017年の地デジ番組映像… と様々な記録メディアの「質感」を使い分けたり、カットのつなぎ方にもいちいち凝ったポスト・プロダクション編集の仕事、大いに楽しませていただいた。

今回、主役が明らかにグルートだった件。

よくある「真の美しさは外見ではない」というモチーフのバリエーションとして、美女と野獣が「読書」を通じて急速に接近するエピソードをもってきたところが、上手いと思った。

あとサブキャラが何気に金(ゴールド)づくめだったり、要所要所で金粉?的なもの?が画面に降り注いで、意味なくリッチな気分になれるので、血中キラキラ濃度が最近足りてない人に推奨しておきたい。俺か!

宇宙人とのコミュニケーションには、文系(言語学者)と理系(物理学者)だけでなく芸術系(視覚コミュニケーションの専門家)も加える方が解決が早いのではないかと思った。

あとルイーズがシャン上将に伝えた最後のメッセージ、勝手に予想して発表するタグ誰か作ってくれー!何だったんだー!もやもやが止まらない!

ジョジョに限らず近年のマンガ原作系実写版映画って、キャラクターの再現度が半端ないよね。有名な役者さんたちがここまで似せてくるか!みたいな。異様に精度の高い「スターかくし芸大会」みたいな。

あえて申し上げるなら、空の色とか画面の傾きとかがもっとクレイジーだとうれしかった。

「カサンドラ・クロス」とか「ポセイドン・アドベンチャー」みたいな往年のパニック・ムービーの、デジタル・リマスタリングというか、最初から最後まで4倍速ぐらいで再生してる感がアツかった。ラストの一騎打ちには『北国の帝王』を幻視!

ウェルメイドな脚本と演出。いやとにかく、国宝級の主役3人がそこにいるだけで胸が熱くなるよね。が…この邦題は……。ちなみに原題は"Going in Style"。貴方ならどう訳す?

そういえば、マイケル・ケインが娘婿を訪ねて胡散臭いエリアに足を運ぶシーンで、通りに「Alfie's 〜」という看板の店があったように見えたが、オマージュ的な遊びかな?(アルフィー

壮絶な「撤退映画」。進軍して勝利することよりも、敗北しながら生還することの方がずっと難しい。戦争に限らず人生のいろんな局面で。

あと、スピットファイアの飛行シーンとその撮影については、空飛ぶアーティスト八谷先生 @hachiya からいずれ徹底的に解説してもらおうと思ってる。

とりあえず車で観に行かなくてよかった。もしそうしていたら駐車場から出る時バックスピン・ターンを決めようとして大破させた確信がある。

"思い出のカセットテープ" という趣向は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』にも似てるが、カセットだけじゃなくモバイルプレイヤー、カーラジオ、マイクロレコーダーといったメディアを使い分け、それら全部がストーリー展開に関係してくるところが、音屋としては胸熱。

ところで映画には、ガムをぷーっと膨らます悪女が出てくる映画と、出て来ない映画の二種類ある。前者が好きな人は絶対観るべき。

迫害を逃れて民を引き連れ荒野に旅立つ「出エジプト」同然の筋書き、民のため磔にされる主人公、そしてあのラスト… 全篇にキリスト教的なメタファーが散りばめられてるっぽいけど、浅学のため解読できないのが残念であった。

現場の人間ならではの名言続出。「音楽は演出チームの一員。セラピストのように監督の心理を聞き出すのが仕事」「作ってる自分が鳥肌立つような音じゃなかったら、観客が感動するわけないだろ」「映画音楽のルールは一つだけ。"ルールはない"ということだ」等々。

メジャー中のメジャーであるハリウッドの映画音楽作曲家たちも、皆「〆切が怖い」とか「最初は何ひとつ思いつかない」とか、悩みまくってる。なにせビジネスの予算規模が大きすぎるので、音楽担当へのプレッシャーもはんぱない。

いちばん胸熱だったのは、どの作曲家も他の作家や作品への敬意にあふれていて「彼は天才だよね」とか「あの作品のここがいい」とか嬉しそうに語りまくるところ。自己表現よりも、作品にとって最適な音を作ることに骨身を削る「職人」ならではの「映画愛」を感じた。

記憶と自己同一性とイメージの三題噺を、前作からさらにアップデート。

前作では「画像」止まりだった「イメージ」の扱いが格段にアップデートされていた。端的なのは「ジョイ」の存在感だが、エルヴィスやモンローやシナトラがグリッチ混じりで召喚されるラスヴェガスのシーンも、「記憶=映像/音響」の表象として印象的だった。

前作の後で数日間続いた「大停電」によってあらゆるデジタルデータが一度消えた後の社会、という設定が面白い。大停電の後も残って捜査の手がかりとなったのは、紙焼きの写真や、埋葬された人骨や、木を削って作った玩具といった「アナログデータ」だったという皮肉。

サウンド的には、ど初っぱなの白玉シンセからあからさまな前作ヴァンゲリスへのオマージュが胸熱。重低轟音と微細な音響を行き来するサウンドデザインも秀逸。水の音、雪の音、砂の上を歩く音…

砂の上と雪の上の足音の違いが絶妙で、単なる場所の違いにとどまらず、属する「世界」の違いとか主人公の想いまで見事に表現されていたが、家のモニターでちっちゃい音で漫然と観てたら多分そこまで気づかなかっただろう。

しかしライアン・ゴズリングがピアノに触ると『ラ・ラ・ランド』のあの旋律を期待してしまうのは当方だけではあるまい…。

スター・ウォーズ 最後のジェダイ

なにしろ最後のクレジットに ”In loving memory of our princess, Carrie Fisher”と出て落涙…。

いま息子氏とかがDVDでこのシリーズを一気に見ても何とも思わないんだろうけど、子供の頃に初めて第1作を観た自分が新作を観ると、もう「あの小僧っ子だったルークがこんなに立派になって…後継ぎもできてよかったな…(涙)」と、親戚のおじさんみたいな感想しか出てこないな。

しかし、内田樹さんと安田登さんの『日本の古典』で「師匠に質問してはいけない」「10年は続けること」「わからないことが大事」とか散々読んだ後でスターウォーズ観たら、弟子が質問すると師匠があっさりフォースの本質を教えてしまっていて、いささかアッチョンブリケ(笑)

カンフー・ヨガ

今年の煩悩を洗い流してきました。クルクル回りながら吹っ飛んで行く車のドアから物理法則を無視してシュタッ!と悪漢が地上に降り立つ場面が見られただけでも1800円の価値あった。全篇を貫くこの多幸感はヨガというより温泉か。印度温泉。

どんなに闘ってもなんだかんだいって誰も敵を殺さない(むしろ火がついちゃった敵の顔を布にくるんで消化して助けたり、コブラのそばの敵に『動くな!』と助言してやったりする)ので、最後のボリウッド・ダンスも「よいよい!皆の衆踊れ!踊れ!」と鷹揚な気分で見てられる。

── 2018年も、劇場の暗闇に身を沈めるのが楽しみです。

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