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  • ヲノサトル

映画を支える職人芸


アメリカの映画業界人によって構成され、あの「アカデミー賞」を主催するプロフェッショナル団体だ。ここが、3月5日に迫った2018年の授賞式を前に、ちょっと面白い動画を公開している。

周知のとおり、アカデミー賞には様々な「部門賞」がある。映画のニュースでは、たいてい監督とか俳優が話題となるわけだが、それ以外の各部門が映画製作にどう貢献しているか、どんな仕事をしているのかを、わかりやすく伝えてくれるショート・フィルムだ。

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いわゆる「大道具」「小道具」をコントロールする仕事。俳優の背景となる舞台装置から、俳優が手に取るちょっとしたものまで、キャメラが撮る全ての「物体」をコントロールする部門だ。この「美術さん」が自分たちの仕事を次々に引き上げてしまうと、あとに残るのは……?

カメラによる撮影と、そのための照明をコントロールする仕事。監督が、物語を含めた映画全体のリーダーだとすれば、視覚表現としての映画の見た目を決めるのが、撮影監督の役割だ。俳優がただそこにいるだけなのに、光の当て方次第で役柄のイメージでどれだけ変わるか、ご覧あれ。

「部門」というより、独立した「ジャンル」として認知されているのがアニメーション。実写映画の中でも様々な場面で部分的に使われ、違和感なく溶け込んでいることが多い。ここで見られるのは、あえて典型的でコミカルなタッチによる、実写へのアニメ合成のデモンストレーション。

いわゆる「映画音楽」には、画面の背景に流れて雰囲気を盛り上げる以外にも、様々な役割がある。ここで紹介されるのは、音楽を効果音のように用いる例。俳優のアクションに同期する音楽が、演技をわかりやすく補強し、映像にドラマティックな「意味」を作り出す。ただし、やりすぎるとカートゥーン・アニメのようにわざとらしく滑稽な表現になっちゃうので、アレンジには細心の注意が必要だ。

光、空間処理、速度変化、コンピュータによる画像や映像の処理など、あらゆる要素を駆使した「映像の錬金術」それが視覚効果。ごくシンプルなスタジオであっても、視覚効果によって奥行きや広がりを感じさせるファンタジックな空間を作り出すことができる。

ある意味、視覚以上に観客の心に作用し、リアリティを作り出したり場面を演出するのが、聴覚=音響効果かもしれない。俳優の心理を描写し、空間や環境や背景を描き出し、物語の展開まで想像させる、音響効果の役割がよくわかる映像だ。

映画とは、撮影された様々な断片をつなぎ合わせ、連続した時の流れをフィクションとして生み出す「時間芸術」だ。場面と場面をどんな順番で、どう組み合わせるかによって「意味」を作り出し、観客の心理を誘導する創造行為、それが編集の仕事。

最後は、衣装とメイクが変われば俳優はここまで別の人物になれる、というわかりやすい例。

余談だが個人的な経験談を。

あるベテランのメイクさんに「テレビのメイク」と「映画のメイク」の違いを訊ねたことがある。「テレビはお茶の間でお年寄りも子供も観る前提だから、本当の血みどろや、ベッタベタに汚い顔とかはNG。映画の場合はリアリティを追求するため、目を背けたくなるような表現も許されるのが面白い」と語ってくれた。

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というわけで、ひとくちに「映画」と言っても、じつに様々なプロフェッショナルの共同作業で成り立っていることがよくわかる。まさに総合芸術。

こんど映画を観る時は、こういった「職人芸」に注目してみるのも、面白いかもしれない。

(2018. 3. 1)

http://www.wonosatoru.com

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