どこで読んだか忘れたけど。
江戸時代の職人は「稼いでちょっとお金が残ったら、まず良い道具を買え。もうちょっと残ってたら、服を買って身なりを整えろ」と言われていた、という話が記憶に残ってる。
「宵越しの金を持たないのが江戸っ子」なんてカッコつけつつも、入金を使い果たしたすだけでは「次」がない。
「次」を呼び寄せるためには、道具をアップデートしてより良いプロダクトを提供することも、外見をアップデートしてクライアントの期待を高めることも重要だと、江戸っ子は知っていた。
身なりと言えば好きな話がある。ハリウッド映画業界のプロデューサーたちはなぜ、みんな高級なダークスーツに身を包んでいるのか? イカサマな稼業だからだ。イカサマな稼業がインチキな格好してたら誰も出資してくれない。だからダークスーツなのだという。
そういえばCM音楽の大先輩に、機材運びのアシスタントとしてついて行ったことがある。録音スタジオにシンセを十何台も並べるのを見て「これ全部使うんですか?」と訊いたら「そんなわけないだろ。でも大金を払うクライアントは、なるほどこれは金がかかるなと、目で見て納得したいものなんだ」と言われた。
しかしまあ、そんな計算してるかしてないかはべつとして、ミュージシャンなんて人種は大体、お金が入ると今すぐ必要なわけでもない楽器を買っちゃったり、高価なスニーカーを買っちゃったりして、すかさず報酬を使い果たしてしまう人が多いように見受けられる。
「道具」と「身なり」にお金を使う、江戸職人の伝統を受け継いでいる …… と言えなくもない …… たぶん。
(2018.11.19)