俺ぐらいの猛者になると、洗濯物のポケットからクチャクチャになつて印刷も消えた謎の紙片が出てきたって驚きもしないが、「一体何の紙だったんだろう…明らかに名刺ともレシートとも厚さのちがうあの紙は…」と、喉に引っかかった小骨のように気になる (が、すぐに忘れる)
俺ぐらいの猛者になると、冷蔵庫の扉を開けたはずみで生卵が床に落ちて砕け散っても「おやおや、ずいぶんと元気なヒヨッコが入っていたようだな」と軽口を叩くことができる。それからおもむろにひざまずいて「f×ck!」とか「sh×t!」とか知る限りの罵声を発しながら床を拭く #俺ぐらいの猛者になると
俺ぐらいの猛者になると、コーヒーをいれてるとき紙フィルターがぺろんとめくれてコーヒー粉がカップに流れ込んでも、そんな事なかったかのように渋い表情のままコーヒーをぐびぐび飲んで口のまわりを粉だらけにしている
俺ぐらいの猛者になると、出張で泊まったビジネスホテルの朝、湯を切らぬままふくれあがったカップ焼きそばとか、プシュッとあけたまま口もつけてない缶チューハイがベッドサイドに放置されているのを見つけても、なぜ昨夜そんなものを買ったのか思い出すことすらできない
俺ぐらいの猛者になると、毎日お湯を注ぐたびに必ずこうなる事から推察して、紙フィルターとはそもそもこうやって使うものだと確信すらしている
(2018.11.29)