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ヲノサトル

絵を見る、音を聴く


絵が上手く描けるからといって入学してくる美大生の多くは、ぜんぜん先達の絵を見ていない。そんな中で飛び抜けたいなら、とにかく古今東西の絵を見まくること だ。だが、そうアドバイスしても美術館やギャラリーに足を運ぶ学生は少ない。

実行する人が少ない地道な作業だからこそ、実行したら確実に一つ上のレベルに行ける。音楽制作における「耳コピ」もその一つ。筋トレみたいなものだ。

書き写したら文章は上手くなる。耳コピすれば音楽は上達する。いろんな絵を見れば自分の作品も面白くなる。……と、いつも当たり前のことを言ってるだけで申し訳ない。

でも、くどいようだけどそれを実行できる人はほんのわずか。その「わずか」側に入るかどうかで、人生は変わってくる

大事なことは二つある。

一つは「耳コピしろ」とか「美術館を見に行っとけ」みたいな、今すぐは役に立たなそうな謎ミッション を律儀にこなし続けることができるかどうか。

もう一つは「キーになる人」との出会い。この二つがマッチングした時にステージクリアして次に進むRPGが、人生だ。

「耳コピ」っていうとなんか裏ワザっぽいけど、聞いた音を譜面に書き取るのは音大受験では「聴音」と呼ばれ、美大受験で言えば鉛筆デッサンにあたる超必須スキルです。

当方は正統な美術教育を受けたことがないが、息子氏が通っていた美術予備校のデッサン授業を見学したところ、「描く」こと以上に、対象を「視る」ことが求められていて、なるほどと納得したものだ。

我々はふだん 機能やイメージで漠然と世界を眺めているだけで、網膜にどう像が結ばれているかまで正確に意識しながら視てはいない。それを意識化するのがデッサンの意義だと感じた。

同じように、楽曲を聞き取ってパートごとに記譜したり打ち込んだりする「耳コピ」作業とは、今まで意識せずザックリ「曲」として「聞いていた」だけの音楽を、あらためて細部まで「聴く」訓練として有効なのだ。

それはまた、音楽という完成品がどのように組み立てられているか、作り手の企業秘密を解読するための、リバース・エンジニアリングでもある。

(2019.2.18)

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